UXデザイナーの職務を整理する|「UI/UXデザイナー」って書くのいい加減にやめようよ

2016年7月9日

テクテク関西で、「連載モジュールデザイン」と題して、Webデザインとは何者であるか。UX,ペルソナでUIを評価すること、UIとはどういう要素で構成されているのかなどを整理していっています。
本稿は、その番外編として、「UI,UXは何かはわかったよ。でも/じゃあ、最近よく聞くようになったUXデザイナーは何する人なの」というところについて考えていこうと思います。

Web制作の歴史を振り返る

Web業界というのはここ10年ほどで大成長した分野であり、その成長プロセスは、仕事が細分化していくプロセスとしてもとらえることができます。
 
それこそ黎明期といわれる1990年代なんて、UI,UXの言葉がなかったどころか、下手するとプログラマー/デザイナーという区分もありませんでした。HTMLを覚えた人が、ホームページをつくる時代。当時は、ダイヤルアップ接続がメジャーだったので、今みたいに画像を多用する”きれいな”Webサイトなんて作りようがなかったんですね。
floatもなく、というかCSSがなく、tableタグだけでデザインをするのですが、画像じゃなくて、tableタグを使い過ぎるとWebサイトが重くなったといえば、どれほどの制約の中、ホームページが作られていたか想像に難くないと思います。
 
もちろんCMSもないので、大規模なサイトだとHTMLファイルが100個以上あって、保守メンテ何それ、な世界。
 
その後、ネット回線がISDNになり、ADSLになり、となる中で、画像を使った”きれいな”Webサイトをつくれるようになりました。同時に、需要も増え始め、それにしたがって供給側も変化・拡大。
そうなると、供給側も、ただつくるだけではなく、「何をつくるか」が問われるようになり、Webの世界に「デザイン」を持ち込みます。
 
言っておきますが、ここからですよ。作業工程上、デザインされたものをコーディングするようになったのは。それまでは、デザイナーが関わっていたとしても、「どうデザインするか」ではなく、「コーディングされるものにデザイン的要素をどう付け加えることができるか」に過ぎず、コーディングの方が優先でしたもの。
 
そして、デザインとコーディングの分離から、「分業」という考え方がうまれ、CMSの登場あたりからコーディングも「HTMLコーダー」と「プログラマー」に分離し、現在のように

  • ディレクター
  • デザイナー
  • コーダー
  • プログラマー

という業務上の職域分類が一般的になりました。
なので、昔からWebに関わってる人は、得手不得手はあったとしても、「え、全部ひとりでできるよ?」という方が多いんですよね。それはこういう歴史的経緯があったからなのです。
 

どうしてUXデザイナーって今までいなかったの?

では、なぜUXデザイナーって今までいなかったのでしょうか。
どうして、今、言い出されるようになったのでしょうか。
 
「UX白書が刊行されるようになったから」「UI,UXという言葉がようやく普及したから」。
そういった面ももちろんあると思いますが、私は「Webをつくる時代から、育てる時代になったから」というのが適切と考えています。
 
ちょっと前までは、Webはほとんどが新規案件でした。2000年初旬は「Webを持つこと」が一種のステータスで、一部上場企業でもWebサイトを持っていないところは少なくありませんでした。Web業界も「Webサイトを持つことのメリット」という点を重視していましたので、SEOという言葉が必要以上にもてはやされたのは記憶に新しいと思います。
 
しかしながら、もう今はそんなことありませんよね。Webを持っているクライアントは多いものの、活用できていないクライアントの占める割合は決して少なくなく、Webをどう活用するか、が問われる時代になりました。
 
デザインにフォーカスして話をすると、紙面デザインのように「作って納品したら終わり」だったものが、なぜ、Webでやるのか、を見つめなおす必要がでてきたのです(詳しくは「Webデザイン再考ーー紙面デザインとの対比からみるWebデザイン」をご覧ください)。
その結果、浮かび上がってきたのが、UIうんぬんだけではなく、もうひとつの軸としてのUXと、「Webを成長させる」という視点でみた時のPDCAサイクルでした。「UXでWebデザインを評価しようーーいいWebデザインとは何かを考える」で、仮説検証プロセスについて書きましたが、まさにその部分が今、注目されている職域なのです。
 
この見方から考えると、既存プロセスにおけるデザイナーを「UXデザイナー」と称するのは間違いであることははっきりわかります。どっかで「デザインプロセスだけではなく、もっと大きな視点でデザインすることができるデザイナー」みたいな表現で、現在のデザイナーの上位互換みたいな議論をみたこともありますが、それもずれてると思います。
 
designerを「デザイナー」と訳したのがわかりにくくなった原因で、「設計」としたほうがわかりやすいのではないでしょうか。ux designerは「UXの設計者」であり、大きくウェイトをディレクション側に持った職域です。
 

UXデザイナー職務の2大主張

さて、そういった背景から生まれた「UXデザイナー」ですが、私が知る限り、「UXデザイナー」の職務にはふたつの議論があります。
 

ディレクター職

「Webを成長させる」という観点をもっているディレクター職です。ちなみに私はこちらを押しています。
要求定義・要件定義の際に、「顧客から求められるもの」だけではなく、顧客を通したユーザは誰であるかを整理し、その要求に沿った仮説を立て、各プロセスにおいて仮説検証を行うことを主たる職域とする考え方です。
@maki_sakiさんの「おっぱいから見るUI/UXとPELSONA」というスライドは秀逸です。こういった仮説を立て、検証を行うお仕事であり、グラフィックデザインはまた異なった職務となります。
 

ディレクター+デザイナー職

ディレクションできるデザイナーがWebサイトを成長させていく論です。要求定義・要件定義からUIデザインまでやって仮説検証サイクルをまわして自分で修正するスーパーマンデザイナー!!
いや、いないわけじゃないんですよ。私の知ってる範囲だと、 @witch_doktorさん(水交デザイン)とかできますし・・・。
 

なぜ、UIデザインまでやる話がでてきちゃってるのか

Webクリエイターボックスさんの「UXデザイナーって何するの?」 の記事の中に、
 

デザインについては別の担当部署になる場合もありますが、UXデザイナーがインターフェイスデザインも行う場合も多いです。

 
という表記がありまして、これを誤解して「UXデザイナーはUIデザインを行うものなんだ!」と解釈して生まれた議論かなぁと私は解釈しています。わざわざ、「場合も多いです」ってセンテンス1行目に書いてくれてるのに・・・。
 
「UI/UXデザイナー」と一緒くたにと扱われることが多いですが、そもそも論としてUIデザインとUXの設計は別物です。UI,UXは別物だから一緒に語るな馬鹿野郎という話は有名ですし、UXにUIが内包されるとか言い出すと、その前に(ユーザ観点からすると)デザインにコーディングは内包されるはずで、デザイナーとコーダーなんて分けたらだめみたいな話になるので正直現実味がない話になります。
ですので、私はUXの設計者の職務にUIデザインが含まれるという主張は違うな、と考えておりますが、そういう主張も聞きますのでご紹介している次第です。
 

まとめ

「UI/UXデザイナー」という言葉が溢れかえっていますが、こうやってUXの設計について整理したあとに考えてみますと、これは、2通りの意図があると私は考えています。
 
ひとつは、「ただきれいなだけのデザインはやめよう」という意図です。UIとUXの整理をしているわけではなく、「使い勝手がいいという要素もデザインに入れてよね」というだけのメッセージ。「ちゃんとユーザのことも考えてデザインできるデザイナー」を指して、UI/UXデザイナーと呼称している場合が多いかなと思っています。
もうひとつは、デザイナーの上位互換。要件定義もできるよね、Analytics呼んで、顧客も話もできるようね。(既存の作りきりの)サイト制作をすることができるよね。新規案件リリース後はタッチしないから、仮説検証プロセスはいらないよ。デザイナー+ディレクションできる人募集!
 
もちろん、そのどちらも重要な要素ですが、「UI/UXデザイナー」という言葉が指す職務ではないですよね。というか、これ自体「ディレクター/デザイナー」みたいな全く別の言葉をくっつけてしまっている造語なので、やめた方がいいかと思います。
それでも、この複数技能をひとりに求めたいんだ、という場合、求人の職務としては「UX設計もできるUIデザイナー」と書くのが適切なのではないでしょうか。
 
それでは、また。