UXでWebデザインを評価しようーーいいWebデザインとは何かを考える|連載モジュールデザイン2

2016年4月29日

こんにちは、rdlabo.incの榊原です。
先日開催された「FRONTEND CONFERENCE 2016」で、『グロースハックを実現する「モジュールデザイン」とCSS設計』というタイトルで登壇しまして、そこで話したこと、話したらなかったことを連載形式で紹介します。
 
今回は、Webデザインのいい悪いをどうやって評価するかについて考えたいと思います。

 

Webデザインの評価軸を考える

「良いWebデザイン」と言われて、どういったものが挙げられるでしょうか。

  • インターフェイスが使いやすい
  • デザインが最先端でおしゃれ
  • 印象に残って、Webサービスを再訪してくれる
  • 使っていて不快感を覚えない
  • クライアントが気に入ってくれる

挙げだすときりがありませんが、敢えていうと、「数字がとれるWebデザイン」は目的達成の手段として正しい評価軸ではあるのですが、リリースまで「このデザインはアクセス数が伸びる」「Webサービスを再訪してくれる」などは仮説にしか過ぎず、「きっとそうなるはず」と個人の価値観によって評価されます。というか、上記の全てが(相当、逸脱したデザインではない限り)仮説に過ぎず、個々人で評価が異なります。そして、プロジェクトにおけるその弊害は大きいです。
 
そして、個々人の価値観で判断しやすいデザインが評価対象になることがほとんどです。
「クライアントが気に入ってくれる」なんてその最たるものですよね。担当者が途中で変わったら、価値基準が変わったために、大幅な変更を強いられるといったWebデザインあるあるの辛い話の多くは、価値基準が人それぞれであることに端を発しています。
 
以下の話は、まぁ、笑えない。

クライアントよ、お前の依頼の大変さを思い知れ!これがデザイナーにとっての「デザイン修正」だ!

 
何よりも難しいのが、みんな「よりよくしたい」という気持ちを持っていることです。デザイナーにとっては、ころころいうことが変わるわがままな担当であっても、当人にとっては強い善意から生まれているので、否定できないし、否定すると揉めることがほとんどです。

ですので、Webデザインを考えるには、まずどうやってWebデザインを評価するか、を考える必要があります。
 

ペルソナ、UXという共通言語を持とう

価値基準がそれぞれ異なるのは、共通言語をもっていないから、ということができます。
例えば「女の子らしいデザイン」といっても、女の子らしい、の取り方はひとそれぞれ。かわいいもかっこいいも人それぞれですので、それが食い違うからデザインが迷走します。
「いやいや、デザインできないのにいろいろ口出しするクライアントがおかしいだろう」というのもひとつの意見ですが、クライアントを無視してプロジェクトは成立しませんし、かといって、クライアントに迎合していいデザインができるかどうかは皆さんが一番わかっていると思います。
 
そこで、ペルソナとUXという共通言語から、Webデザインを評価することをおすすめしています。

ペルソナとは

マーケティング用語として、「ペルソナ」という言葉は聞いたことありますか??もちろん、某ゲームの名称でも、仮面のことでもありません(笑)
ペルソナとは、Webサービスの理想のユーザ像を指します。あなたのサービスを使うのはどんな人でしょうか。と前置きなくいいだしますと、ほとんどのクライアントは「誰にでも使ってもらえるのが理想だ。逆に誰かしか使わないデザインでは困る」と言いますので、冗長になりますが、マーケティングの背景を少し説明しようと思います。
 

ペルソナが生まれた背景

まず、現状としまして、1.サービスは供給多寡、2.人口減少社会の局面に入った、であることをしっかり頭に入れて下さい。
現状との対比は、高度成長期です。この時代は、日本経済が急速に成長し、一億総中流という意識が定着するほどでした(戦後だったのに、今考えても驚きですよね)。しかしながら、実際のところは需要の拡大に供給が全く追いついていない状態でした。
 
と説明すると難しく感じるかもしれませんが、簡単にいうと、作ったものは片っ端から売れていったのです。ですので、小売業のやり手は「仕入れルートを持っているかどうか」で決まりました。誰に売るか、どう売るか、などを考える必要はほぼなかったのです。ユーザが購入に踏み切る閾値もとても低いものであり、ユーザはまずは商品を手に入れることに価値があったのです。
ですので、ユーザ像といったら、年齢・性別といった大枠の属性ぐらいしか定める必要はありませんでした。
 
近年は、皆さんご存知の通り、全く状況が異なります。
需要に対して、供給の方が大きくなったのです。その結果、例えば冷蔵庫ひとつとっても、電化製品にいくとここ1年以内に発表されたものだけでも10は下りません。サイズ・利用シーン・天板の素材(ガラスかプラスチックか)・製氷の機能・果てにはカラーリングまで「よくぞここまで細分化した」と言いたくなるほど、様々な冷蔵庫が売られています。もちろん、商品だけに関わらず、販売の仕方も「ただ置いておけば売れる」ではなく、どう接客し、何を説明し、アフターフォローはどうするか、まで様々な販売戦略が組まれています。
 
供給多寡になったことにより、ユーザが購入に踏み切る閾値がとても高くなったのです。高度成長期は6割の購入意欲で購入していたものが、9割の意欲を満たさないと購入しなくなったようなものと考えて下さい。
では、6割の意欲から、9割にたどり着くまでの「プラス3割」は一体どこにあるのでしょうか。マーケティング上では、それが、個々人の問題意識であったり、趣味趣向であったりと、性別・年齢といった「ユーザの属性」で共通化できない部分であると考えています。
 
だって、同じ23歳の女性であっても、壁にあわせて地味なカラーがいい人もいれば、ほぼ家に帰らないから冷蔵庫の機能は最低限でいいという人まで、様々ですものね。
 

ペルソナの手法

で、ようやくペルソナの話になるのですが、昔のように23歳女性で東京在住の人というだけでは「プラス3割部分」を埋めることができないので、サービスを利用する顧客像を1人のリアルな人間像として詳細に詰めることがマーケティングにおいて当たり前になり、ペルソナの策定が求められるようになりました。
 
具体的なペルソナ策定プロセスは、「共感をつくる!お客様中心のペルソナマーケティング手法まとめ」であったり、各種書籍をご確認いただければと思います。
マーケティングおける商品購買層は「共通属性の人」ではなく、「ペルソナと、ペルソナに似通った人」へと転換されたのです。
 
ですので、ペルソナでは、年齢や仕事などの基本的な属性に留まらず、一日をどうやって過ごすか、情報媒体にどうやって接するか、友人関係はどうか、学歴はどうか、といった一見、そのサービスに関係ないところまで詰めます。
ただ、重要なのは、「理想の顧客像」というのは「ideal customer」の和訳であり、都合のいい顧客像という意味ではなく、実在することが前提です。ですので、「地域活性化での我が田舎のペルソナは、日本の田舎に関心がある海外の富裕層だ。テレビでみたから、存在はする」といった我田引水的都合の良さを持たないことが肝要です。
 

UX(ユーザエクスペアレント)とは

UXは、近年「UXデザイナー募集!」という何が何やらの求人が多いので、名称は一度は見たことがあるのではないでしょうか。
私がUXという言葉をはじめて聞いたのは、「iPhoneは、箱を開ける前の期待度、開けた時のワクワク感というユーザ体験を大切にするために、パッケージ設計にめちゃくちゃこだわっている」という記事を読んだ時でした。この文脈が指すユーザ体験こそが、近年言われるUXですよね。
 

理論としてのUX

もう少し掘り下げていいますと、UX白書ではUXは時系列に4段階に分けることができます。

  • どんな商品だろう?! ――1.利用前の期待感(予期的UX)
  • あ、これ便利!さくさく動く! ――2.利用中の体験(一時的UX)
  • 買ってよかったこれ使えるぞ ――3.利用直後の評価(エピソード的UX)
  • 友だちにもすすめようこれはいいぞ! ――4.繰り返し利用したことによる商品の見方(累積的UX)

 

実務としてのUX

ただ、これを段階的プロセスとして、プロジェクトのUXとして策定するのは少し形式的すぎて、私的には違うのではないかなと思っています。
それよりは、この4プロセスを「コンテキスト」というストーリーにまとめて、ユーザへの共感からUXを考えていく「コンテキストと共感から始めるUX改善」の記事が実務的ではないかなと思っています。
商品そのもの(UI)をどういったコンテキストで利用するか。リンク先では以下のように紹介されています。
 

暑い日、のどが渇いた人が自販機で水を買う。
その買い方がよく分からなかったり、いくらの値段で販売しているのかわかりにくく、なかなか水が買えずイライラした。
暑い日なのに、せっかく買えた水がぬるい、もう二度とこの自販機で買おうと思わない。

 
「暑い日、のどが渇いた人が自販機で水を買う」がコンテキストです。その前提があるからこそ、「なかなか水が買えずイライラした」「せっかく買えた水がぬるい」というUXが導かれるわけで、UXがどうあるべきか議論はどういったユーザが、どういったコンテキストで行動しているかを規定することによって生まれるのです。
 

まとめ:UXでUIを評価する

さて、ここまで「共通言語を持つ」ということをテーマに、ペルソナとUXとはそもそも何者であるかを見てきました。
ざっくりいうと、ペルソナとは「ユーザ像は誰を指すか」であり、UXは「そのペルソナはどういったコンテキストで利用するかのストーリー」です。
 
ここで、「良いwebデザイン」の箇条書きをもう一度見なおしてみましょう。
 

  • インターフェイスが使いやすい
  • デザインが最先端でおしゃれ
  • 印象に残って、Webサービスを再訪してくれる
  • 使っていて不快感を覚えない
  • クライアントが気に入ってくれる

 
冒頭に、このどれもが評価者の主観に基づくものであり、担当者が変わると評価軸が変わって悲惨なことになりうると書きました。しかしながら、ペルソナとUXがしっかりと固まっていたら、ペルソナとUXを使ってこれらを評価することができます。
 
スクリーンショット 2016-05-01 9.08.12
 
「これは、おしゃれじゃないと思うな」とクライアントが言ったところで、それはペルソナの評価ではありません。おじさんが女子高生の「おしゃれ」が理解できないというのは巷にありふれた話ですが、それと同様に、他者のおしゃれであったり、不快感であったりは、本人でないとわからないことがはっきりします。
これはデザイナーであっても同様です。
例えば、「女性向けサービスは可愛いデザインがいい」という固定概念をもったデザイナーがいたとしましょう。しかしながら、ペルソナ・UXは「かっこいい女性になりたい。憧れの女性が使っていて、ユーザも憧れの女性に近づくために使いはじめる」と仮説を立てていれば、この2者は相容れません。
 
クライアントも、ペルソナ・UXを手にいれることによって、デザイナーを説得する武器を持つのです。
 
ですので、ペルソナとUXが固まっていて、はじめてデザイナーとクライアントではじめて同一目線で議論することができます。それは、場合によっては骨子が固まる前にユーザテストを実施する必要がでてくるでしょう。クライアントヒアリングなんて要らないから、ユーザヒアリングを先にしようということもあるかもしれません。
 
良いWebデザインは、デザイナーやクライアントが主観的に評価するのではなく、ペルソナ,UXによって仮説が立てられ、検証されるデザインを指すのではないでしょうか。
 


 
次回は、ペルソナ,UXが評価するデザインを3要素に分解し、仮説検証プロセスから考える「モジュールデザイン」の必然性についてご紹介します。
それでは、また。
 
前回 : Webデザイン再考ーー紙面デザインとの対比からみるWebデザイン
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